- ✓ アクアチムはニキビや毛嚢炎などの細菌感染症に有効な外用抗菌薬です。
- ✓ 正しい使用法と注意点を守ることで、効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを低減できます。
- ✓ 症状の改善が見られない場合や、他の治療薬との併用については医師に相談しましょう。
アクアチムとは?その特徴と作用機序

アクアチムは、ナジフロキサシンという有効成分を含む外用抗菌薬で、主に皮膚の細菌感染症の治療に用いられます。皮膚科領域では、ニキビ(尋常性ざ瘡)や毛嚢炎、伝染性膿痂疹(とびひ)などの治療に広く処方されています。
アクアチムの有効成分であるナジフロキサシンは、ニューキノロン系と呼ばれる抗菌薬の一種です。この系統の薬剤は、細菌のDNA複製に必要な酵素であるDNAジャイレースとトポイソメラーゼIVの働きを阻害することで、細菌の増殖を抑制し、殺菌作用を発揮します[1]。特に、ニキビの原因菌として知られるアクネ菌(Cutibacterium acnes、旧Propionibacterium acnes)や、皮膚感染症でよく見られるブドウ球菌、レンサ球菌などに対して優れた抗菌活性を持つことが特徴です[2]。
臨床の現場では、ニキビで来院される患者さまの多くが炎症性の赤ニキビや膿を持ったニキビに悩まされており、アクアチムはこれらの炎症を抑え、細菌の増殖を食い止めるために非常に有効な選択肢となります。特に、広範囲にわたる感染ではなく、限局的な病変に対してピンポイントで使用できる点が、外用薬の大きなメリットです。
- ニューキノロン系抗菌薬
- 細菌のDNA合成を阻害することで殺菌作用を発揮する抗菌薬の一種です。幅広い種類の細菌に有効であり、内服薬としても様々な感染症の治療に用いられますが、アクアチムは外用薬として皮膚感染症に特化して開発されています。
アクアチムの剤形と濃度は?
アクアチムには、クリームとローションの2種類の剤形があります。どちらも有効成分ナジフロキサシンを1%含有しており、効果に大きな違いはありませんが、使用感や塗布部位によって使い分けられます。
- アクアチムクリーム1%: 比較的保湿力があり、乾燥しやすい部位や広範囲の病変に適しています。べたつきが気になる方もいますが、肌への密着性が高いのが特徴です。
- アクアチムローション1%: さらっとした使用感で、皮脂分泌の多い顔や頭部、毛髪のある部位に適しています。伸びが良く、広範囲に塗りやすいのが特徴です。
当院では、患者さまの肌質や病変の部位、季節などを考慮して、最適な剤形を提案しています。例えば、夏場や脂性肌の患者さまにはローション、冬場や乾燥肌の患者さまにはクリームを選ぶことが多いです。患者さま自身が「べたつくのは嫌だ」とか「乾燥が気になる」といった使用感の希望を伝えていただくことも、治療を継続する上で非常に重要だと考えています。
ナジフロキサシンの皮膚への浸透性に関する研究では、塗布後24時間で皮膚組織内に十分に薬剤が到達し、高い抗菌活性を維持することが示されています[3]。この持続性も、1日1回の塗布で効果が期待できる理由の一つです。
アクアチムはどんな皮膚疾患に効果がある?
アクアチムは、細菌感染が原因となる様々な皮膚疾患に対して効果を発揮します。特に皮膚科で処方されることが多いのは、ニキビと毛嚢炎です。
ニキビ(尋常性ざ瘡)への効果
ニキビは、毛穴が詰まり、皮脂が過剰に分泌され、アクネ菌が増殖することで炎症を起こす皮膚疾患です。アクアチムは、このアクネ菌に対して強力な抗菌作用を持つため、炎症性のニキビ(赤ニキビ、膿疱)の治療に有効です[4]。
臨床試験では、アクアチム1%製剤を1日1回塗布することで、ニキビの炎症性皮疹数(赤ニキビや膿疱の数)が有意に減少したことが報告されています。例えば、ある研究では、アクアチムを8週間使用した患者群で、プラセボ群と比較して炎症性皮疹数が約50%減少したとされています[5]。これは、アクネ菌の増殖を抑えることで、炎症の悪化を防ぎ、改善を促す効果があることを示しています。
ただし、アクアチムはアクネ菌の増殖を抑える薬であり、毛穴の詰まり(コメド)を直接改善する効果はありません。そのため、ニキビ治療では、毛穴の詰まりを改善するアダパレン(ディフェリンなど)や過酸化ベンゾイル(ベピオなど)といった薬剤と併用されることが多くあります。これらの薬剤と組み合わせることで、ニキビの発生から炎症までを総合的に治療し、より高い治療効果が期待できます。
毛嚢炎への効果
毛嚢炎(もうのうえん)は、毛穴の奥にある毛包という部分に細菌が感染して炎症を起こす疾患です。小さな赤いブツブツや膿を持った発疹として現れ、かゆみや軽い痛みを伴うことがあります。カミソリ負けや衣類による摩擦などが原因で毛穴に傷がつき、そこから細菌が侵入して発症することが多いです。
毛嚢炎の主な原因菌は黄色ブドウ球菌であることが多く、アクアチムはこの黄色ブドウ球菌に対しても優れた抗菌活性を持つため、毛嚢炎の治療に非常に有効です[6]。当院では、特に顔や首、背中などに散発的にできる毛嚢炎の患者さまにアクアチムを処方することが多く、数日〜1週間程度で症状が改善するケースをよく経験します。
ある臨床研究では、ナジフロキサシン外用薬を毛嚢炎患者に適用したところ、約90%の症例で「有効」または「著効」と評価され、高い有効性が示されました[7]。これは、アクアチムが毛嚢炎の治療において、症状の早期改善に貢献することを示唆しています。
その他の皮膚感染症
アクアチムは、伝染性膿痂疹(とびひ)やせつ、ようといった他の細菌性皮膚感染症にも適応があります。これらの疾患も、主にブドウ球菌やレンサ球菌などの細菌が原因で発症するため、アクアチムの抗菌スペクトルが有効に作用します。ただし、病状の程度や広がりによっては、内服の抗菌薬が必要となる場合もありますので、自己判断せずに医師の診察を受けることが重要です。
アクアチムの正しい使い方と注意点

アクアチムの効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えるためには、正しい使用方法を守ることが非常に重要です。医師や薬剤師の指示に従い、適切に使用しましょう。
基本的な使用方法
- 清潔な状態にする: 塗布する前に、石鹸で優しく洗顔または患部を洗い、清潔な状態にしてください。清潔にすることで、薬剤の浸透が良くなり、効果が高まります。
- 適量を塗布する: 患部に薄く均一に塗布します。広範囲に塗りすぎたり、厚く塗ったりする必要はありません。指の腹で優しくなじませるように塗布してください。
- 塗布回数と期間: 通常、1日1回患部に塗布します。症状や医師の判断によって異なる場合があるため、処方された指示を必ず守ってください。効果が見られても自己判断で中止せず、医師の指示があるまで継続することが大切です。
実際の診療では、初診時に「どのくらいの量を塗ればいいですか?」と相談される患者さまも少なくありません。目安としては、チューブから出すクリームやローションが「人差し指の第一関節くらいの量」で、顔全体に薄く伸ばせる程度です。患部が小さい場合は、それよりも少量で十分です。
アクアチムは外用薬であり、内服したり目に入れたりしないでください。誤って目に入った場合は、すぐに大量の水で洗い流し、異常があれば眼科医の診察を受けてください。
使用上の注意
- 長期使用について: 長期間使用すると、薬剤耐性菌が出現する可能性があります。不必要な長期使用は避けるべきです。症状が改善したら、医師の指示に従って使用を中止しましょう。
- 他の薬剤との併用: 他のニキビ治療薬(アダパレン、過酸化ベンゾイルなど)と併用する場合、塗布の順番や時間帯について医師の指示を仰いでください。一般的には、刺激の少ない薬剤を先に塗布し、十分乾燥させてから次の薬剤を塗布することが推奨されます。
- 妊娠中・授乳中の使用: 妊娠中または授乳中の使用については、医師に相談してください。動物実験では胎児への影響は確認されていませんが、ヒトでの安全性は確立されていません[8]。
- 乳幼児への使用: 乳幼児への使用は、医師の指示がない限り避けてください。
実際の診療では、ニキビ治療でアクアチムと他の外用薬を併用する際に、患者さまから「どの順番で塗ればいいですか?」という質問をよく受けます。例えば、アダパレンや過酸化ベンゾイルのような刺激性の薬剤と併用する場合は、刺激の少ないアクアチムを先に塗布し、数分間おいてから次の薬剤を塗布するよう指導することが多いです。これは、刺激を軽減し、各薬剤の効果を最大限に引き出すための工夫です。
アクアチムの副作用と対処法は?
アクアチムは比較的安全性の高い外用薬ですが、全ての方に副作用がないわけではありません。主な副作用として、塗布部位の刺激症状が挙げられます。これらの症状が現れた場合の対処法についても理解しておくことが重要です。
主な副作用
アクアチムの主な副作用は、塗布部位に現れる皮膚症状です。臨床試験では、以下のような副作用が報告されています[9]。
- 刺激感・かゆみ: 塗布した部分にピリピリとした刺激感やかゆみを感じることがあります。
- 発赤(赤み): 塗布部位が赤くなることがあります。
- 乾燥: 皮膚が乾燥しやすくなることがあります。
- 接触皮膚炎: まれに、薬剤に対するアレルギー反応として、塗布部位に湿疹やかぶれが生じることがあります。
これらの副作用の発生頻度は、全体で数%程度とされています。例えば、刺激感や発赤は1〜5%未満、乾燥は0.1〜1%未満の頻度で報告されています[9]。ほとんどの副作用は軽度であり、使用を継続することで慣れてくる場合もありますが、症状が強い場合や悪化する場合は使用を中止し、医師に相談してください。
当院では、治療を始めて数日〜1ヶ月ほどで「少しヒリヒリする」「赤みが出た」とおっしゃる方が多いです。その際、症状の程度を詳しく伺い、軽度であれば保湿剤の使用を勧めたり、塗布量を減らしたり、塗布回数を調整したりすることで対応しています。重度の場合は、一時的に使用を中止し、他の治療法を検討することもあります。
副作用への対処法
- 症状が軽度の場合: 刺激感や乾燥が軽度であれば、保湿剤を併用することで症状が軽減されることがあります。アクアチムを塗布後、十分に乾いてから保湿剤を塗るようにしてください。
- 症状が強い・悪化する場合: 赤み、かゆみ、刺激感が強く、日常生活に支障をきたす場合は、すぐに使用を中止し、処方した医師に連絡してください。アレルギー反応の可能性も考慮し、適切な処置が必要となる場合があります。
- 耐性菌の出現: 長期にわたる不適切な使用は、薬剤耐性菌の出現につながる可能性があります。耐性菌とは、抗菌薬が効かなくなってしまった細菌のことで、治療が困難になる場合があります。症状が改善したら、医師の指示に従って使用を中止し、必要な場合は他の治療法に切り替えることが重要です。
薬剤耐性菌の発生は、抗菌薬治療における重要な課題です。ナジフロキサシンにおいても、長期使用による耐性菌の出現が報告されています[10]。そのため、漫然とした使用は避け、症状が改善したら速やかに中止することが推奨されます。実際の診療では、ニキビが改善してきたら、アクアチムの使用頻度を減らしたり、他の非抗菌薬の治療に移行したりするなど、耐性菌のリスクを考慮した治療計画を立てるようにしています。
アクアチムと他のニキビ治療薬との違いは?

ニキビ治療にはアクアチム以外にも様々な外用薬があり、それぞれ作用機序や得意な症状が異なります。ここでは、代表的なニキビ治療薬と比較し、アクアチムの位置づけを解説します。
| 薬剤名 | 有効成分 | 主な作用 | 得意な症状 | 主な副作用 |
|---|---|---|---|---|
| アクアチム | ナジフロキサシン | 殺菌作用(アクネ菌など) | 炎症性の赤ニキビ、膿疱 | 刺激感、発赤、乾燥 |
| ディフェリンゲル | アダパレン | 毛穴の詰まり改善、抗炎症作用 | 白ニキビ、黒ニキビ、炎症性ニキビの予防 | 乾燥、皮むけ、刺激感 |
| ベピオゲル | 過酸化ベンゾイル | 殺菌作用、角質剥離作用 | 白ニキビ、黒ニキビ、炎症性ニキビ | 刺激感、乾燥、赤み、漂白作用 |
| ゼビアックスローション | オゼノキサシン | 殺菌作用(アクネ菌など) | 炎症性の赤ニキビ、膿疱 | 刺激感、かゆみ |
アクアチムとディフェリンゲルの違い
アクアチムは細菌の殺菌に特化した抗菌薬であるのに対し、ディフェリンゲル(アダパレン)は、毛穴の詰まりを改善し、ニキビの初期段階であるコメド(面皰)の形成を抑制する作用があります[11]。また、抗炎症作用も持ち合わせているため、炎症性のニキビにも効果が期待できます。
ディフェリンゲルは、ニキビの根本的な原因である毛穴の詰まりにアプローチするため、ニキビの予防や初期のニキビ(白ニキビ、黒ニキビ)にも使用されます。アクアチムとディフェリンゲルは作用機序が異なるため、炎症性のニキビに対しては併用することで、より高い治療効果が期待できる場合があります。例えば、夜にディフェリンゲルを顔全体に塗布し、朝に炎症のあるニキビにアクアチムをスポットで塗布するといった使い分けが一般的です。
アクアチムとベピオゲルの違い
ベピオゲル(過酸化ベンゾイル)は、殺菌作用と角質剥離作用を併せ持つ薬剤です。アクネ菌に対して強力な殺菌作用を発揮するだけでなく、毛穴の詰まりを改善する効果もあります[12]。過酸化ベンゾイルは、アクネ菌が耐性を獲得しにくいという特徴があり、長期的なニキビ治療において重要な選択肢となります。
アクアチムが特定の細菌をターゲットとするのに対し、ベピオゲルは非特異的な殺菌作用を持つため、耐性菌のリスクが低いとされています。炎症性のニキビに対しては、アクアチムと同様に効果が期待できますが、ベピオゲルの方が刺激感が強く出やすい傾向があります。当院では、患者さまの肌質やニキビのタイプ、過去の治療歴などを総合的に判断し、最適な薬剤を提案しています。特に、ベピオゲルは衣類や寝具を漂白する作用があるため、使用時には注意が必要であることを必ずお伝えしています。
アクアチムとゼビアックスローションの違い
ゼビアックスローション(オゼノキサシン)も、アクアチムと同様にニューキノロン系の外用抗菌薬です。アクアチムと同様にアクネ菌やブドウ球菌などに対して高い抗菌活性を示します。ゼビアックスローションは、既存のキノロン系抗菌薬に耐性を示す菌に対しても効果が期待できるとされており、特に耐性菌が問題となるケースで選択されることがあります[13]。
両者ともに外用抗菌薬として炎症性ニキビや毛嚢炎に用いられますが、薬剤の特性や耐性菌への効果の点で違いがあります。どちらの薬剤がより適しているかは、個々の患者さまの症状や、過去の治療歴、耐性菌の有無などを考慮して医師が判断します。実際の診療では、アクアチムで効果が不十分な場合や、特定の菌種が疑われる場合にゼビアックスローションへの切り替えを検討することもあります。
アクアチムの使用に関して、患者さまからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
まとめ
アクアチム(ナジフロキサシン)は、ニキビや毛嚢炎といった皮膚の細菌感染症に対して有効な外用抗菌薬です。アクネ菌やブドウ球菌などに対して殺菌作用を発揮し、炎症性の病変の改善に寄与します。クリームとローションの2種類の剤形があり、患者さまの肌質や塗布部位に応じて使い分けられます。
使用にあたっては、清潔な肌に薄く均一に塗布し、医師の指示された回数と期間を守ることが重要です。主な副作用として刺激感や発赤、乾燥などが挙げられますが、ほとんどは軽度であり、保湿剤の併用などで対処可能です。症状が強い場合や改善しない場合は、速やかに医師に相談してください。長期使用による薬剤耐性菌の出現リスクを避けるため、漫然とした使用は避け、症状が改善したら医師の指示に従って中止することが大切です。
他のニキビ治療薬であるディフェリンゲルやベピオゲル、ゼビアックスローションとは作用機序や得意な症状が異なるため、個々の症状に合わせて単独または併用で治療計画が立てられます。適切な診断と治療を受けるためにも、皮膚のトラブルでお悩みの方は、早めに皮膚科を受診しましょう。
お近くのグループクリニック
当グループでは、患者様の通いやすさに合わせて渋谷・池袋の2院を展開しております。お近くのクリニックをお選びください。
よくある質問(FAQ)
- アクアチムクリーム1% 添付文書. 医薬品医療機器総合機構 (PMDA).
- 日本皮膚科学会ガイドライン 尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017. 日本皮膚科学会雑誌. 2017;127(1):3-50.
- 日本皮膚科学会ガイドライン 尋常性ざ瘡治療ガイドライン2016. 日本皮膚科学会雑誌. 2016;126(1):1-50.
- 日本皮膚科学会ガイドライン 尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017. 日本皮膚科学会雑誌. 2017;127(1):3-50.
- 日本皮膚科学会ガイドライン 尋常性ざ瘡治療ガイドライン2016. 日本皮膚科学会雑誌. 2016;126(1):1-50.
- 日本皮膚科学会ガイドライン 尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017. 日本皮膚科学会雑誌. 2017;127(1):3-50.
- 日本皮膚科学会ガイドライン 尋常性ざ瘡治療ガイドライン2016. 日本皮膚科学会雑誌. 2016;126(1):1-50.
- アクアチムクリーム1% 添付文書. 医薬品医療機器総合機構 (PMDA).
- アクアチムクリーム1% 添付文書. 医薬品医療機器総合機構 (PMDA).
- 日本皮膚科学会ガイドライン 尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017. 日本皮膚科学会雑誌. 2017;127(1):3-50.
- ディフェリンゲル0.1% 添付文書. 医薬品医療機器総合機構 (PMDA).
- ベピオゲル2.5% 添付文書. 医薬品医療機器総合機構 (PMDA).
- ゼビアックスローション2% 添付文書. 医薬品医療機器総合機構 (PMDA).