- ✓ ミヤBMは酪酸菌を主成分とする整腸剤で、腸内環境を改善し、様々な消化器症状の緩和に寄与します。
- ✓ 酪酸菌は短鎖脂肪酸である酪酸を産生し、腸管バリア機能の強化、免疫調節、抗炎症作用など多岐にわたる効果が期待されています。
- ✓ 重篤な副作用は稀ですが、他の薬剤との併用やアレルギー歴がある場合は医師や薬剤師に相談が必要です。
ミヤBMとは?酪酸菌の基本を理解する

ミヤBMは、宮入菌(みやいりきん)と呼ばれる酪酸菌(Clostridium butyricum MIYAIRI)を主成分とする医療用整腸剤です。この薬剤は、腸内フローラのバランスを整えることで、下痢、便秘、腹部膨満感などの消化器症状を改善することを目的としています。酪酸菌は、腸内で短鎖脂肪酸(特に酪酸)を産生する能力を持つことが特徴です。短鎖脂肪酸は、腸の主要なエネルギー源となるだけでなく、腸管のバリア機能を強化し、免疫系の調節、炎症の抑制など、腸の健康維持に不可欠な役割を果たすことが知られています[2]。当院では、過敏性腸症候群や抗生物質関連下痢の患者さまに、腸内環境の改善を目的としてミヤBMを処方するケースが多くいらっしゃいます。
酪酸菌とは?その特徴と働き
酪酸菌は、嫌気性(酸素を嫌う)のグラム陽性細菌の一種で、ヒトの腸内に常在する善玉菌の一つです。特に、ミヤBMに配合されている「宮入菌」は、1933年に宮入近治博士によって発見された株であり、その高い安定性と酪酸産生能力が評価されています。酪酸菌が腸内で産生する酪酸は、大腸の粘膜細胞にとって最も重要なエネルギー源であり、これにより腸の細胞が正常に機能し、腸管の健康が維持されます。また、酪酸は以下のようないくつかの重要な生理作用を持つことが研究により示されています。
- 腸管バリア機能の強化: 酪酸は、腸管上皮細胞間の密着結合(タイトジャンクション)を強化し、有害物質や病原菌の体内への侵入を防ぐバリア機能を高めます。
- 抗炎症作用: 酪酸は、腸内の炎症性サイトカインの産生を抑制し、抗炎症性サイトカインの産生を促進することで、腸の炎症を和らげる効果が期待されます。これは、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)の症状緩和にも寄与する可能性が示唆されています[2]。
- 免疫調節作用: 酪酸は、免疫細胞の分化や機能を調節し、全身の免疫バランスを整える働きがあります。腸は体内で最大の免疫器官であるため、腸内環境の改善は全身の免疫機能にも影響を与えます。
- 病原菌の増殖抑制: 酪酸菌は、乳酸菌やビフィズス菌などの他の善玉菌と共生し、腸内環境を酸性に保つことで、サルモネラ菌やO-157などの病原菌の増殖を抑制する効果も報告されています。
これらの働きを通じて、酪酸菌は腸の健康を多角的にサポートし、消化器系のトラブルだけでなく、全身の健康にも良い影響を与えると考えられています。実際の診療では、患者さまの症状だけでなく、生活習慣や既往歴を詳しく伺い、腸内環境の乱れが原因と考えられる場合には、積極的に酪酸菌の活用を検討しています。
- 短鎖脂肪酸(Short-Chain Fatty Acids: SCFAs)
- 腸内細菌が食物繊維を発酵させることで産生される有機酸の総称。酢酸、プロピオン酸、酪酸などが代表的で、腸管のエネルギー源、免疫調節、炎症抑制など、様々な生理機能を持つことが知られています。
ミヤBMの適応症と効果のメカニズム
ミヤBMの主な適応症は、「腸内菌叢の異常による諸症状の改善」です。具体的には、下痢、便秘、腹部膨満感、軟便などの症状に対して効果が期待されます。これらの症状は、腸内細菌のバランスが崩れること(ディスバイオーシス)によって引き起こされることが多く、ミヤBMに含まれる酪酸菌が腸内フローラを正常化することで症状の改善を促します。添付文書によると、抗生物質投与時の腸内菌叢の異常による下痢にも効果があるとされています[5]。
効果のメカニズムとしては、酪酸菌が腸内で酪酸を産生し、これにより腸の蠕動運動が正常化され、便の水分バランスが調整されることで下痢や便秘が改善されます。また、酪酸による腸管バリア機能の強化や抗炎症作用は、過敏性腸症候群(IBS)のような機能性消化管疾患の症状緩和にも寄与する可能性があります。臨床の現場では、抗生物質を服用している患者さまから「お腹の調子が悪くなりにくい」という声をよく聞きます。これは、抗生物質によって善玉菌が減少するのを酪酸菌が補い、腸内環境の急激な悪化を防いでいるためと考えられます。
ミヤBMの期待される効果とは?最新の研究と臨床知見
ミヤBMの主成分である酪酸菌は、古くから整腸剤として用いられてきましたが、近年ではその多岐にわたる生理機能が注目され、様々な疾患への応用が研究されています。単なる整腸作用に留まらない、酪酸菌の新たな可能性が示唆されています。
消化器症状の改善と腸内環境の正常化
ミヤBMの最も基本的な効果は、消化器症状の改善と腸内環境の正常化です。酪酸菌は、腸内で酪酸を産生することで、腸管のpHを適正に保ち、善玉菌の増殖を助け、悪玉菌の増殖を抑制します。これにより、腸内フローラのバランスが改善され、下痢や便秘といった症状が緩和されます。特に、抗生物質の使用によって引き起こされる下痢(抗生物質関連下痢)は、腸内細菌叢の乱れが主な原因であり、ミヤBMのような酪酸菌製剤は、この予防や治療に有効であるとされています[5]。当院の患者さまの中には、抗生物質服用時にミヤBMを併用することで、下痢の頻度や重症度が有意に低下したと報告される方が多くいらっしゃいます。
免疫機能への影響と抗炎症作用
酪酸菌が産生する酪酸は、腸管の免疫系に直接作用し、免疫応答を調節する能力を持つことが分かっています。酪酸は、制御性T細胞(Treg細胞)の分化を促進し、炎症性サイトカインの産生を抑制することで、腸内の過剰な免疫応答や炎症を鎮める効果が期待されます[2]。この抗炎症作用は、炎症性腸疾患(IBD)の症状緩和や再燃予防に寄与する可能性が示唆されており、実際にいくつかの研究で酪酸菌のIBDに対する有効性が検討されています。また、酪酸菌は、大腸がんの治療において免疫チェックポイント阻害剤(aPD-1)の効果を高める可能性も示唆されており、IL-6を介した免疫抑制を阻害することで、抗腫瘍免疫応答を強化することが報告されています[1]。これは、酪酸菌が腸内環境だけでなく、全身の免疫システムにも影響を与える可能性を示唆する重要な知見です。
腸脳相関と全身の健康への影響
近年、腸と脳が密接に連携している「腸脳相関」の概念が注目されています。腸内細菌叢のバランスは、気分、認知機能、ストレス応答など、脳の機能に影響を与えることが分かってきました。酪酸菌が産生する酪酸は、この腸脳相関を介して全身の健康に影響を与える可能性があります。例えば、肥満における認知機能障害を、酪酸菌が腸脳相関を介して改善することが示唆されています[3]。これは、酪酸菌が腸の健康だけでなく、精神神経疾患や代謝性疾患など、幅広い疾患の予防や治療に貢献する可能性を秘めていることを示しています。初診時に「最近集中力が続かない」「気分が落ち込みやすい」と相談される患者さまも少なくありません。その中には、腸内環境の乱れが背景にあるケースも考えられるため、問診を通じて腸の状態を把握し、必要に応じて酪酸菌製剤の活用を提案することもあります。
| 項目 | ミヤBM(酪酸菌) | 一般的な乳酸菌製剤 |
|---|---|---|
| 主要な産生物質 | 酪酸(短鎖脂肪酸) | 乳酸 |
| 腸管細胞への影響 | 主要なエネルギー源、バリア機能強化 | 間接的な栄養供給、腸内環境の酸性化 |
| 抗炎症作用 | 直接的な抗炎症効果が期待される | 間接的な免疫調節による効果 |
| 免疫調節 | Treg細胞誘導など、より直接的な関与 | 腸内環境改善による間接的な影響 |
| 適応症(添付文書) | 腸内菌叢の異常による諸症状の改善 | 整腸、軟便、便秘、腹部膨満感 |
ミヤBMの正しい使い方と注意点

ミヤBMは医療用医薬品であり、医師の処方に基づいて使用することが原則です。適切な用法・用量を守り、安全かつ効果的に使用することが重要です。
用法・用量はどのように守るべきか?
ミヤBMの標準的な用法・用量は、成人に対して1日3回、1回1g(散剤の場合)または1錠(錠剤の場合)を食後に経口投与することとされています[5]。ただし、年齢や症状によって適宜増減されることがありますので、必ず医師の指示に従ってください。散剤は水に溶かして服用することも可能ですが、熱いお湯に溶かすと菌が死滅する可能性があるため、常温の水やぬるま湯で服用するようにしましょう。また、ミヤBMは生菌製剤であるため、服用を中断すると効果が薄れることがあります。症状が改善しても、医師の指示があるまでは服用を継続することが望ましいです。実際の診療では、患者さまの症状の経過を見ながら、服薬期間や量を調整することがよくあります。特に慢性的な消化器症状の場合、数ヶ月単位で継続して服用することで、より安定した腸内環境の維持を目指します。
副作用や相互作用はあるのか?
ミヤBMは、生菌製剤であり、もともと腸内に存在する酪酸菌を補給するものであるため、重篤な副作用は非常に稀です。添付文書によると、副作用として報告されているのは、発疹などの過敏症がごくまれにみられる程度です[5]。もし服用中に異常を感じた場合は、速やかに医師または薬剤師に相談してください。また、他の薬剤との相互作用についても、現在のところ特筆すべき報告はありません。しかし、免疫抑制剤を服用している方や、重篤な基礎疾患を持つ方は、念のため医師に相談することが推奨されます。妊娠中や授乳中の方への安全性についても、これまでのところ問題は報告されていませんが、念のため医師に相談してから服用を開始することが望ましいです。
ミヤBMは、医療用医薬品であり、医師の処方箋が必要です。自己判断での服用や中断は避け、必ず医師の指示に従ってください。特に、他の疾患で治療を受けている場合や、アレルギー体質の方は、事前に医師や薬剤師に相談しましょう。
ミヤBMを服用できないケースはある?
ミヤBMは比較的安全性の高い薬剤ですが、ごく稀に服用が推奨されないケースや注意が必要な場合があります。添付文書上、原則として禁忌とされるケースはありませんが、以下のような状況では慎重な判断が必要です。
- 薬剤アレルギーの既往: 過去にミヤBMの成分に対してアレルギー反応を起こしたことがある場合は、服用を避けるべきです。
- 重度の免疫不全状態: 極めて重度の免疫不全状態にある患者さん(例: 臓器移植後で強力な免疫抑制剤を使用している、重度のAIDS患者など)では、生菌製剤の投与には慎重な検討が必要です。ただし、酪酸菌は一般的に安全性が高いとされています。
- 小児への投与: 小児への投与は、年齢や体重に応じて用量を調整する必要があります。特に乳幼児への投与は、医師の厳密な管理のもとで行われるべきです。
これらのケースに該当するかどうかは、自己判断せずに必ず医師に相談してください。実際の診療では、患者さまの全身状態や他の服用薬を総合的に評価し、ミヤBMの処方が適切であるかを判断しています。
ミヤBMと他の整腸剤との違いとは?
整腸剤には様々な種類があり、それぞれ異なる菌株や作用機序を持っています。ミヤBMが他の整腸剤とどのように異なるのかを理解することは、適切な選択に繋がります。
乳酸菌製剤・ビフィズス菌製剤との比較
整腸剤として広く知られているものに、乳酸菌製剤やビフィズス菌製剤があります。これらも腸内環境を整える善玉菌ですが、ミヤBMの主成分である酪酸菌とは異なる特徴を持っています。
- 乳酸菌: 主に乳酸を産生し、腸内を酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑えます。小腸を中心に活動し、多様な菌種が存在します。
- ビフィズス菌: 乳酸と酢酸を産生し、大腸の主要な善玉菌の一つです。腸内環境の酸性化に加えて、免疫調節作用も期待されます。
- 酪酸菌(ミヤBM): 主に酪酸を産生し、大腸の粘膜細胞のエネルギー源となります。腸管バリア機能の強化、抗炎症作用、免疫調節作用が特に注目されています。
このように、それぞれが異なる短鎖脂肪酸や有機酸を産生し、腸内の異なる部位で活動したり、異なる生理作用を発揮したりします。酪酸菌は、特に大腸の健康維持に重要な酪酸を供給することで、他の菌とは一線を画す働きを持つと言えるでしょう。臨床の現場では、患者さまの症状や腸内環境の状態に応じて、これらの菌種を単独で用いるか、あるいは組み合わせて処方するかを検討します。例えば、便秘が主訴の患者さまにはビフィズス菌製剤を、下痢や炎症症状が強い患者さまには酪酸菌製剤を優先的に考慮するなど、使い分けをしています。
プロバイオティクスとしてのミヤBMの独自性
プロバイオティクスとは、「適切な量を摂取した際に宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物」と定義されます。ミヤBMの酪酸菌もこのプロバイオティクスの一つです。その独自性は、特に酪酸産生能力の高さにあります。酪酸は、腸管上皮細胞の分化や増殖を促進し、腸の粘膜を健康に保つ上で極めて重要な役割を担っています。また、酪酸菌は芽胞(がほう)と呼ばれる耐久性の高い形態をとることができ、胃酸や胆汁酸に強く、生きたまま腸まで届きやすいという特徴も持っています。これにより、腸内での定着率が高まり、効果的に作用することが期待されます。さらに、近年では、酪酸菌が大腸がんの予防や治療補助、肥満における認知機能改善など、消化器系以外の疾患への応用可能性も研究されており、その多機能性が注目されています[3][4]。これらの研究成果は、ミヤBMが単なる整腸剤ではなく、より広範な健康効果を持つプロバイオティクスであることを示唆しています。

ミヤBMについて、患者さまからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
まとめ
ミヤBMは、酪酸菌(宮入菌)を主成分とする医療用整腸剤であり、腸内フローラのバランスを整えることで、下痢や便秘などの消化器症状の改善に貢献します。酪酸菌が産生する酪酸は、腸管バリア機能の強化、抗炎症作用、免疫調節作用など、多岐にわたる生理機能を持つことが最新の研究で明らかになっています。重篤な副作用は稀で安全性も高いとされていますが、医療用医薬品であるため、必ず医師の処方と指示に従って使用することが重要です。他の乳酸菌製剤やビフィズス菌製剤とは異なる独自の作用機序を持つため、患者さまの症状や状態に応じた適切な選択が求められます。腸内環境の改善は全身の健康に繋がる重要な要素であり、ミヤBMはその一助となる可能性を秘めています。
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よくある質問(FAQ)
- Mingxu Xie, Kai Yuan, Yongxin Zhang et al.. Tumor-resident probiotic Clostridium butyricum improves aPD-1 efficacy in colorectal cancer models by inhibiting IL-6-mediated immunosuppression.. Cancer cell. 2025. PMID: 40780216. DOI: 10.1016/j.ccell.2025.07.012
- Magdalena K Stoeva, Jeewon Garcia-So, Nicholas Justice et al.. Butyrate-producing human gut symbiont, Clostridium butyricum, and its role in health and disease.. Gut microbes. 2022. PMID: 33874858. DOI: 10.1080/19490976.2021.1907272
- Mingxuan Zheng, Huaiyu Ye, Xiaoying Yang et al.. Probiotic Clostridium butyricum ameliorates cognitive impairment in obesity via the microbiota-gut-brain axis.. Brain, behavior, and immunity. 2023. PMID: 37981012. DOI: 10.1016/j.bbi.2023.11.016
- Hui Xu, Haidan Luo, Jiayu Zhang et al.. Therapeutic potential of Clostridium butyricum anticancer effects in colorectal cancer.. Gut microbes. 2023. PMID: 36941257. DOI: 10.1080/19490976.2023.2186114
- ミヤBM 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)


























