- ✓ デルマ(デルマトロン)は、低周波電流を用いて皮膚の良性病変を除去する電気凝固治療器です。
- ✓ ほくろ、いぼ、脂漏性角化症などの治療に用いられ、短時間で比較的出血が少ないのが特徴です。
- ✓ 治療後の適切なケアと紫外線対策が、良好な治癒と色素沈着の予防に不可欠です。
デルマ(デルマトロン)とは?治療の基本原理を解説

デルマ(デルマトロン)は、低周波の電流を利用して皮膚の良性病変を除去する電気凝固治療器です。この治療法は、キュレッタージと電気凝固を組み合わせたものとして、皮膚科領域で広く用いられています[1]。当院では、特に顔や首にできる小さなほくろやいぼでお悩みの方が多く、デルマによる治療を希望されるケースが頻繁にあります。
デルマによる治療の基本原理は、高周波電流を病変部に集中させることで、組織内の水分を瞬時に蒸散させ、タンパク質を凝固させることにあります。これにより、病変組織は熱によって破壊され、除去されます。この方法は、メスを使用する外科的切除と比較して、出血が少なく、縫合の必要がないため、患者さんの負担が軽減されることが多いです。また、電気凝固によって血管が同時に閉鎖されるため、術中の出血が抑えられ、術後の腫れや内出血も比較的軽度で済む傾向があります。
治療に用いられる電流は、周波数や波形によって組織への影響が異なりますが、デルマでは主に低周波電流が使用されます。これにより、周囲組織への熱損傷を最小限に抑えつつ、病変部のみを効果的に除去することが期待できます。臨床の現場では、治療を始めて数ヶ月ほどで「跡が目立たなくなって嬉しい」とおっしゃる方が多いです。
- 電気凝固(Electrocautery)
- 高周波電流を組織に流し、発生する熱によって組織内のタンパク質を変性・凝固させることで、病変の除去や止血を行う医療技術です。皮膚科領域では、ほくろやいぼなどの良性病変の除去に用いられます。
デルマの治療は、一般的に局所麻酔を使用して行われるため、治療中の痛みはほとんど感じません。麻酔が効いたことを確認した後、専用のプローブ(電極)を病変部に接触させ、短時間で治療が完了します。治療時間は病変の大きさや数によって異なりますが、数分から十数分程度で終わることが多いです。治療後には、一時的に赤みや腫れが生じることがありますが、通常は数日から1週間程度で落ち着いていきます。
この治療法は、特に表皮や真皮上層に存在する病変に対して高い効果を発揮します。深部に及ぶ病変や悪性の可能性が疑われる病変に対しては、組織を採取して病理検査を行う必要があるため、外科的切除や他の治療法が選択されることがあります。そのため、治療前には必ず医師による詳細な診察と診断が不可欠です。
デルマの歴史と進化
電気凝固の技術は、20世紀初頭から医療分野で応用されてきました。当初は主に止血目的で用いられていましたが、その後、皮膚病変の除去にも応用されるようになり、現在に至ります。デルマ(デルマトロン)のような低周波電気凝固装置は、より精密な治療を可能にするために開発され、その安全性と有効性が確立されてきました。技術の進化により、より細かな病変にも対応できるようになり、美容皮膚科領域でもその応用範囲が広がっています。現代のデルマ装置は、出力調整が細かくできるため、患者さんの皮膚の状態や病変の種類に応じて、最適な治療設定を選択することが可能です。
デルマはどのような症状に適用される?
デルマ(デルマトロン)は、主に皮膚の表面に存在する様々な良性病変の除去に適用されます。その適用範囲は広く、多くの患者さんの悩みに対応できる治療法です。初診時に「顔のほくろが気になる」「首のいぼが増えてきた」と相談される患者さまも少なくありません。
- ほくろ(色素性母斑): 小さな盛り上がりのあるほくろや、平坦でも色が濃いほくろの除去に用いられます。特に顔や首など、目立つ部位のほくろに対して、美容的な観点から選択されることが多いです。ただし、悪性の可能性が否定できない場合は、病理検査のために切除生検が優先されます。
- いぼ(尋常性疣贅、軟性線維腫など): ウイルス感染による尋常性疣贅や、加齢に伴って発生する軟性線維腫(スキンタグ)の除去に効果的です。特に首や脇の下にできる小さな軟性線維腫は、デルマで手軽に除去できるため、多くの患者さんに喜ばれています。
- 脂漏性角化症(老人性いぼ): 加齢とともに顔や体幹に現れる茶色から黒色の盛り上がった病変です。デルマは、これらの病変を比較的きれいに除去するのに適しています。
- 汗管腫: 目の周りにできる小さな肌色のブツブツで、汗腺の異常増殖によるものです。デルマで一つ一つ丁寧に除去することで、見た目の改善が期待できます。
- 稗粒腫: 皮膚の表面にできる小さな白い粒で、角質が詰まってできたものです。デルマで開口部を処理し、内容物を排出することで除去します。
これらの病変は、デルマの電気凝固によって組織が破壊・蒸散されることで除去されます。治療の深さや範囲を細かく調整できるため、周囲の正常な皮膚組織への影響を最小限に抑えながら、ターゲットとなる病変のみを効率的に治療することが可能です。実際の診療では、病変の深さや大きさ、患者さんの肌質などを総合的に判断し、最適な治療計画を立てることが重要なポイントになります。
デルマは良性病変の除去に適していますが、悪性腫瘍の可能性が疑われる場合は、安易な電気凝固は避けるべきです。悪性腫瘍の場合、電気凝固によって組織が破壊されると、正確な病理診断が困難になることがあります[3]。そのため、治療前には必ずダーモスコピーなどの詳細な診察を行い、必要に応じて生検(組織の一部を採取して検査すること)を実施することが重要です。
デルマと他の治療法との比較
皮膚病変の除去には、デルマ以外にも様々な方法があります。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあり、病変の種類、大きさ、深さ、部位、患者さんの希望などを考慮して最適な方法が選択されます。以下に、代表的な治療法とデルマを比較した表を示します。
| 項目 | デルマ(電気凝固) | 外科的切除 | レーザー治療(CO2レーザーなど) | 液体窒素療法 |
|---|---|---|---|---|
| 治療原理 | 低周波電流による組織の凝固・蒸散 | メスによる病変の物理的切除 | レーザー光による組織の蒸散・焼灼 | 超低温による組織の凍結壊死 |
| 出血 | 少ない(止血作用あり) | あり(縫合が必要) | 少ない(止血作用あり) | なし |
| 麻酔 | 局所麻酔 | 局所麻酔 | 局所麻酔(不要な場合も) | 不要(痛みあり) |
| 病理検査 | 困難または不可 | 可能 | 困難または不可 | 不可 |
| 治療後の傷跡 | 比較的目立ちにくい | 線状の傷跡が残る | 比較的目立ちにくい | 色素沈着、色素脱失の可能性 |
| 適用病変 | 良性の盛り上がった病変 | 良性・悪性、深部病変 | 良性の盛り上がった病変、シミ | いぼ、脂漏性角化症など |
デルマ治療の流れと注意すべきポイント

デルマ(デルマトロン)による治療は、いくつかのステップを経て行われます。患者さんが安心して治療を受けられるよう、当院では治療前の説明から術後のケアまで丁寧に行っています。特に、治療後の適切なケアが、最終的な仕上がりに大きく影響するため、詳細な指導を心がけています。
治療前の準備と診察
- カウンセリングと診断: まず、患者さんの気になる病変について詳しくお話を伺います。医師がダーモスコピー(特殊な拡大鏡)などを用いて病変を詳細に観察し、良性であるか、悪性の可能性がないかを確認します。悪性の疑いがある場合は、病理検査のために生検や外科的切除を検討します。
- 治療計画の説明: デルマによる治療が適切と判断された場合、治療方法、期待できる効果、リスク、ダウンタイム、費用などについて詳しく説明します。患者さんの疑問や不安を解消し、納得いただいた上で治療に進みます。
- 局所麻酔: 治療部位に局所麻酔薬を注射します。麻酔が効くまで数分間待ち、治療中の痛みを最小限に抑えます。
実際の治療プロセス
麻酔が十分に効いたことを確認した後、デルマ装置を用いて病変の除去を行います。医師が専用のプローブを病変部に接触させ、低周波電流を流します。電流が流れると、病変組織が熱によって凝固・蒸散し、除去されます。この際、焦げたような匂いがすることがありますが、これは組織が熱で変化しているためであり、心配ありません。治療は病変の大きさや深さに応じて、数秒から数十秒で完了することがほとんどです。複数の病変がある場合でも、一つずつ丁寧に処理していきます。
治療後のケアと経過
デルマ治療後のケアは、傷の治り具合や最終的な仕上がりに大きく影響します。適切なケアを行うことで、合併症のリスクを減らし、よりきれいな皮膚を目指すことができます。
- 消毒と軟膏塗布: 治療後は、患部を清潔に保ち、処方された軟膏を指示通りに塗布します。これにより、感染を防ぎ、傷の治りを促進します。
- 保護: 患部には、保護テープや絆創膏を貼ることが推奨されます。特に、摩擦や刺激を受けやすい部位では、しっかりと保護することが大切です。
- かさぶた: 治療後数日でかさぶたが形成されます。かさぶたは無理に剥がさず、自然に剥がれ落ちるのを待ちましょう。無理に剥がすと、傷跡が残ったり、色素沈着の原因になったりすることがあります。
- 紫外線対策: かさぶたが剥がれた後の新しい皮膚は非常にデリケートです。紫外線に当たると色素沈着を起こしやすいため、徹底した紫外線対策(日焼け止め、帽子、日傘など)が不可欠です。この期間の紫外線対策を怠ると、せっかくきれいに治っても茶色いシミとして残ってしまうリスクがあります。
- 経過観察: 治療後、数週間から数ヶ月かけて皮膚が再生し、徐々に周囲の皮膚と馴染んでいきます。定期的な経過観察のために、指示された期間で再診することが推奨されます。
臨床の現場では、治療後のケアをきちんと行われた患者さまは、非常に良好な結果を得られることが多いです。特に紫外線対策は、色素沈着を防ぐ上で最も重要なポイントの一つです。
デルマ治療におけるリスクと副作用はある?
デルマ(デルマトロン)による電気凝固治療は、比較的安全な治療法ですが、他の医療行為と同様に、いくつかのリスクや副作用が存在します。これらの可能性を事前に理解しておくことは、患者さんにとって非常に重要です。当院では、治療前にこれらのリスクについて十分に説明し、患者さんが納得した上で治療を受けていただけるよう努めています。
一般的な副作用と合併症
- 赤みと腫れ: 治療部位には、一時的に赤みや腫れが生じることがあります。これは治療による炎症反応であり、通常は数日から1週間程度で自然に治まります。
- かさぶた: 治療後、数日以内に黒っぽいかさぶたが形成されます。かさぶたは傷を保護する役割があり、無理に剥がすと傷跡が残りやすくなるため、自然に剥がれ落ちるのを待つことが重要です。
- 色素沈着(PIH): 治療後に炎症性色素沈着(Post-inflammatory Hyperpigmentation, PIH)が生じることがあります。これは、特にアジア人の肌に多く見られる反応で、治療部位が一時的に茶色っぽくなる現象です。適切な紫外線対策と保湿ケアを行うことで、数ヶ月から1年程度で徐々に薄れていくことが期待できますが、完全に消えない場合もあります。
- 色素脱失: まれに、治療部位が周囲の皮膚よりも白っぽくなる色素脱失が生じることがあります。これは、メラニン色素を産生する細胞が熱によって損傷を受けた場合に起こり得ます。
- 感染: 治療部位が不潔になったり、適切なケアが行われなかったりすると、細菌感染を起こす可能性があります。感染すると、赤み、腫れ、痛みが増強し、膿が出ることがあります。適切な消毒と抗生物質の使用で対応します[4]。
- 瘢痕(傷跡): 非常にまれですが、治療部位に凹みや盛り上がりのある傷跡(瘢痕)が残ることがあります。特に、病変が深い場合や、治療後のケアが不十分な場合にリスクが高まります。
- 再発: 病変の種類によっては、完全に除去されずに一部が残ったり、時間とともに再発したりする可能性があります。特に、ウイルス性のいぼなどは再発しやすい傾向があります。
リスクを最小限に抑えるために
これらのリスクを最小限に抑えるためには、以下の点が重要です。
- 適切な診断: 治療前に医師による正確な診断を受け、悪性腫瘍の可能性を排除することが最も重要です。
- 経験豊富な医師による施術: デルマ治療は、医師の技術と経験が結果に大きく影響します。適切な出力設定と操作により、周囲組織へのダメージを最小限に抑えることが可能です。
- 徹底した術後ケア: 医師の指示に従い、消毒、軟膏塗布、保護、紫外線対策を徹底することが、良好な治癒と合併症予防につながります。
診察の中で、患者さまの肌質や生活習慣なども考慮し、個別にリスクと対策について詳しくご説明することを実感しています。特に、色素沈着のリスクが高い方には、より厳重な紫外線対策や美白剤の使用を推奨することがあります。
デルマ治療の費用と保険適用について

デルマ(デルマトロン)による治療を検討する際、費用と保険適用に関する情報は患者さんにとって重要な関心事です。ここでは、一般的な費用相場と保険適用の条件について解説します。
治療費の相場
デルマ治療の費用は、治療する病変の種類、大きさ、数、そして医療機関によって異なります。一般的に、1つの病変あたりの費用が設定されていることが多いです。具体的な費用は、診察時に医師やスタッフから説明を受けることになりますが、以下に一般的な目安を示します。
- ほくろ・いぼ(直径数ミリ程度): 1個あたり数千円から1万円程度が目安となることが多いです。数が増えるごとに割引が適用される医療機関もあります。
- 脂漏性角化症: 病変の大きさや数によって異なりますが、1個あたり数千円から1万円台が目安です。
これらの費用は、治療費の他に初診料や再診料、麻酔代、処方される薬剤費などが別途必要となる場合があります。正確な費用については、必ず治療を受ける医療機関に直接お問い合わせください。
保険適用の条件
デルマ治療が保険適用となるかどうかは、治療の目的と病変の種類によって判断されます。日本の健康保険制度では、病気の治療を目的とした医療行為は保険適用となりますが、美容目的の治療は保険適用外(自費診療)となります。
- 保険適用となるケース:
- 医学的に治療が必要と判断される場合: 例えば、いぼが大きくなって生活に支障をきたしている、摩擦によって出血や炎症を繰り返す、悪性の可能性を完全に否定できないため病理検査が必要な場合などです。
- 病理組織検査を伴う場合: デルマ治療で病変を除去した後、組織を病理検査に提出する必要がある場合、その検査費用は保険適用となることがあります。しかし、デルマによる電気凝固は組織を破壊するため、病理診断には不向きな場合もあります[3]。
- 保険適用外(自費診療)となるケース:
- 美容目的の治療: ほくろやいぼが医学的に問題がなくても、見た目を改善したいという美容目的で除去する場合、保険は適用されず、全額自己負担となります。
当院では、患者さんの病変が保険適用となるか、自費診療となるかを診察時に明確にお伝えしています。ご不明な点があれば、遠慮なくご質問ください。治療を選択する際には、費用だけでなく、期待できる効果、リスク、術後のケアなども含めて総合的に検討することが重要です。
まとめ
デルマ(デルマトロン)は、低周波電流を用いた電気凝固治療器であり、ほくろ、いぼ、脂漏性角化症などの良性皮膚病変の除去に広く用いられています。この治療法は、局所麻酔下で行われ、出血が少なく、比較的短時間で完了するという特徴があります。治療後はかさぶたが形成され、自然に剥がれ落ちるのを待つことで、比較的目立ちにくい傷跡に治癒することが期待できます。しかし、色素沈着や感染、まれに瘢痕形成などのリスクも存在するため、治療前の正確な診断、経験豊富な医師による施術、そして徹底した術後ケアが非常に重要です。特に、紫外線対策は色素沈着の予防に不可欠です。費用に関しては、美容目的の場合は自費診療となり、医学的必要性がある場合は保険適用となる可能性があります。治療を検討する際は、医師と十分に相談し、ご自身の状態や期待する効果、リスク、費用について理解した上で、最適な選択をすることが大切です。
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よくある質問(FAQ)
- Glenn Goldman. The current status of curettage and electrodesiccation.. Dermatologic clinics. 2003. PMID: 12170889. DOI: 10.1016/s0733-8635(02)00022-0
- L Schmitz, S Hessam, L Scholl et al.. Histological findings after argon plasma coagulation: an ex-vivo study revealing a possible role in superficial ablative treatment of the skin.. Archives of dermatological research. 2018. PMID: 29350263. DOI: 10.1007/s00403-018-1810-3
- Lauro Lourival Lopes Filho, Alice de Oliveira de Avelar Alchorne, Gerson Cotta Pereira et al.. Histological and immunohistochemical evaluation of basal cell carcinoma following curettage and electrodessication.. International journal of dermatology. 2008. PMID: 18477158. DOI: 10.1111/j.1365-4632.2008.03284.x
- Aldona Pietrzak, Konrad Janowski, Grażyna Chodorowska et al.. Candida parapsilosis infection following the electrosurgery procedure.. Dermatologic therapy. 2011. PMID: 21276166. DOI: 10.1111/j.1529-8019.2010.01386.x