- ✓ 季節の変わり目の肌トラブルは、環境変化によるバリア機能低下が主な原因です。
- ✓ 保湿ケアの徹底、紫外線対策、生活習慣の見直しが予防と改善の鍵となります。
- ✓ 症状が改善しない場合は、専門医への相談が重要です。
季節の変わり目の肌トラブルとは?

季節の変わり目の肌トラブルとは、気温や湿度の急激な変化、紫外線量の変動など、外部環境の変化に肌が適応しきれず、乾燥、敏感肌、ニキビ、かゆみなどの症状が現れる状態を指します。これらの変化は、肌のバリア機能が低下しやすくなることで引き起こされます。
春は花粉やPM2.5などのアレルゲンが増加し、気温の上昇とともに皮脂分泌が活発になる一方、冬の乾燥ダメージが残っているため、肌が不安定になりやすい時期です。夏から秋にかけては、夏の強い紫外線ダメージや冷房による乾燥、急激な気温低下が肌に負担をかけます。特に秋は、空気が乾燥し始め、肌の水分量が減少しやすくなるため、乾燥性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の悪化を招くことがあります。冬は低湿度と冷たい外気により、肌の水分が奪われやすく、乾燥が最も深刻になる季節です[3]。当院では、季節の変わり目に「急に肌がカサカサする」「いつもの化粧品が合わなくなった」と相談される患者さまが非常に多くいらっしゃいます。
肌のバリア機能の低下とその影響
肌のバリア機能とは、角層が外部からの刺激(紫外線、アレルゲン、細菌など)の侵入を防ぎ、内部の水分が蒸発するのを抑制する役割を果たす機能です。このバリア機能は、角質細胞と細胞間脂質(セラミドなど)によって構成されており、健康な肌では規則正しく並んでいます。
- 肌のバリア機能
- 皮膚の一番外側にある角層が、外部刺激から体を守り、体内の水分蒸発を防ぐ働きのこと。この機能が損なわれると、肌は乾燥しやすくなり、外部からの刺激に敏感になります。
季節の変わり目には、以下のような要因でバリア機能が低下しやすくなります。
- 湿度変化: 空気が乾燥すると、肌の水分が蒸発しやすくなり、角層の水分含有量が減少します。これにより、角質細胞が剥がれやすくなり、バリア機能が低下します。
- 気温変化: 急激な気温の変動は、肌の血行や代謝に影響を与え、肌のターンオーバー(新陳代謝)のサイクルを乱すことがあります。
- 紫外線: 季節によっては紫外線量が増加し、肌細胞にダメージを与え、バリア機能を直接的に損ないます。特に春から夏にかけては注意が必要です。
- アレルゲン: 花粉やハウスダストなどのアレルゲンが空気中に増えることで、肌に付着し、アレルギー反応や炎症を引き起こし、バリア機能をさらに弱めます。
バリア機能が低下すると、肌は外部刺激に対して無防備になり、かゆみ、赤み、湿疹、乾燥、ニキビなどのトラブルが発生しやすくなります。また、肌のマイクロバイオーム(皮膚常在菌叢)のバランスも崩れやすくなることが報告されており、これが皮膚疾患の悪化に関連する可能性も指摘されています[1]。
季節ごとの肌トラブルの具体的な症状とは?

季節の変わり目には、その季節特有の環境要因が肌に影響を与え、様々な症状を引き起こします。これらの症状を理解することで、適切な対策を講じることができます。
臨床の現場では、季節によって患者さまの訴える症状が大きく異なることを実感しています。例えば、春先には花粉症による顔のかゆみや赤み、秋口には乾燥による全身の痒みを訴える方が増えます。
春の肌トラブル:花粉症皮膚炎、ニキビ、紫外線ダメージ
春は、冬の乾燥から解放されつつも、花粉や黄砂、PM2.5などのアレルゲンが飛散し、肌に付着することでアレルギー性接触皮膚炎を引き起こしやすい時期です。特に、目の周りや首元など、皮膚が薄い部分にかゆみや赤み、湿疹が生じることがあります。また、気温の上昇とともに皮脂分泌が活発になり、毛穴の詰まりからニキビが悪化するケースも少なくありません。
- 花粉症皮膚炎: 花粉が肌に付着し、肌のバリア機能が低下している部分から侵入することで、かゆみ、赤み、腫れが生じます。
- ニキビ・吹き出物: 冬の乾燥で溜まった古い角質と、春の皮脂分泌増加が重なり、毛穴が詰まりやすくなります。
- 紫外線ダメージ: 春は紫外線量が急増し始める時期であり、油断すると日焼けによるシミやそばかすのリスクが高まります。
夏の肌トラブル:汗疹、日焼け、脂性肌
夏は高温多湿な環境と強い紫外線が特徴です。大量の汗は肌を刺激し、汗腺が詰まることで汗疹(あせも)を引き起こすことがあります。また、紫外線による日焼けは、肌の炎症だけでなく、将来的なシミやシワの原因となります[4]。皮脂分泌も年間で最も活発になるため、テカリや毛穴の開き、ニキビが悪化しやすい傾向にあります。
- 汗疹(あせも): 汗管が詰まり、汗が皮膚内に貯留することで、小さな赤いブツブツや水ぶくれが生じます。
- 日焼け・光老化: 強い紫外線は肌のDNAを損傷し、炎症や色素沈着、コラーゲン破壊を引き起こします。
- 脂性肌・ニキビ: 過剰な皮脂分泌は毛穴の詰まりを促進し、アクネ菌の増殖を招きます。
秋の肌トラブル:乾燥肌、敏感肌、アトピー性皮膚炎の悪化
秋は、夏の紫外線ダメージと冷房による乾燥が蓄積された肌に、急激な湿度の低下と気温の変動が加わることで、肌のバリア機能が著しく低下しやすい季節です。これにより、乾燥肌や敏感肌が悪化し、かゆみやひび割れ、粉吹きなどの症状が現れやすくなります。アトピー性皮膚炎の患者さまにとっては、症状が悪化しやすい時期の一つとされています。
- 乾燥肌・かゆみ: 空気中の湿度が低下することで、肌の水分が奪われ、乾燥によるかゆみが生じます。
- 敏感肌: バリア機能の低下により、普段使っている化粧品が刺激に感じたり、外部刺激に過敏に反応したりします。
- アトピー性皮膚炎の悪化: 乾燥やアレルゲンの影響で、アトピー性皮膚炎の症状が悪化しやすい傾向にあります。
冬の肌トラブル:重度の乾燥、しもやけ、肌荒れ
冬は一年で最も湿度が低く、外気も冷たいため、肌の乾燥が最も深刻になる季節です。暖房の使用も室内の湿度をさらに下げ、肌から水分が奪われやすい環境を作り出します。これにより、肌はカサつき、粉吹き、ひび割れ、あかぎれなどの重度の乾燥症状に見舞われやすくなります。血行不良からしもやけになることもあります[3]。
- 重度の乾燥肌: 低湿度と冷気により、肌の水分蒸発が加速し、角層の水分量が極端に低下します。
- しもやけ: 寒さで血行が悪くなり、手足の指や耳などが赤く腫れたり、かゆみや痛みを伴ったりします。
- ひび割れ・あかぎれ: 乾燥が進行すると、皮膚の柔軟性が失われ、亀裂が生じやすくなります。
| 季節 | 主な環境要因 | 代表的な肌トラブル |
|---|---|---|
| 春 | 花粉、PM2.5、紫外線増加、気温上昇 | 花粉症皮膚炎、ニキビ、敏感肌 |
| 夏 | 高温多湿、強い紫外線、冷房 | 汗疹、日焼け、脂性肌、ニキビ |
| 秋 | 湿度低下、気温変動、夏のダメージ | 乾燥肌、敏感肌、アトピー性皮膚炎悪化 |
| 冬 | 低湿度、冷たい外気、暖房 | 重度の乾燥、ひび割れ、しもやけ |
季節の変わり目の肌トラブルの予防と対策は?
季節の変わり目の肌トラブルを予防し、症状を軽減するためには、日々のスキンケアと生活習慣の見直しが不可欠です。肌のバリア機能を維持・強化することが最も重要なポイントとなります。
実際の診療では、季節の変わり目に肌トラブルを訴える患者さまには、まず「いつものスキンケアに何か変化はありましたか?」と伺い、その上で保湿と紫外線対策の重要性を強調しています。特に、肌が敏感になっている時期は、新しい化粧品を試すのを避け、シンプルなケアを心がけるようアドバイスしています。
基本のスキンケアの徹底
肌のバリア機能を守るためには、適切な洗顔と保湿が基本となります。
優しい洗顔
- 洗顔料の選択: 刺激の少ない弱酸性やアミノ酸系の洗顔料を選びましょう。洗浄力が強すぎるものは、肌に必要な皮脂まで奪い、乾燥を悪化させる可能性があります。
- 洗い方: 泡立てネットなどで十分に泡立て、泡で肌を包み込むように優しく洗います。ゴシゴシと擦る摩擦は、肌のバリア機能を傷つける原因となります。
- すすぎ: ぬるま湯(32〜34℃程度)で、洗顔料が残らないように丁寧にすすぎます。熱すぎるお湯は肌の乾燥を招き、冷たすぎる水は毛穴を引き締めすぎて汚れが落ちにくくなります。
十分な保湿
洗顔後はすぐに保湿を行い、肌の水分が蒸発するのを防ぎましょう。
- 化粧水: 肌に水分を補給します。敏感肌の方は、アルコールフリーで低刺激性のものを選びましょう。
- 美容液・乳液・クリーム: 補給した水分を肌に閉じ込める役割があります。セラミド、ヒアルロン酸、NMF(天然保湿因子)など、肌のバリア機能をサポートする成分が配合されたものがおすすめです。季節や肌の状態に合わせて、油分の量を調整しましょう。乾燥が特に気になる場合は、クリームやバームを重ね付けすると良いでしょう。
紫外線対策の徹底
紫外線は季節を問わず肌にダメージを与え、バリア機能を低下させます。特に春から夏にかけては紫外線量が増加するため、徹底した対策が必要です。
- 日焼け止めの使用: 毎日、外出時はもちろん、室内でも窓際にいる場合は日焼け止めを使用しましょう。SPFとPAの数値は、活動内容や季節に合わせて選びます。敏感肌の方は、紫外線吸収剤フリー(ノンケミカル)のものを選ぶと良いでしょう。
- 物理的な対策: 帽子、日傘、サングラス、UVカット機能付きの衣類などを活用し、物理的に紫外線を遮断することも効果的です。
生活習慣の見直し
内側からのケアも肌の健康には重要です。
- バランスの取れた食事: ビタミン、ミネラル、タンパク質などをバランス良く摂取し、肌の再生に必要な栄養素を補給しましょう。特にビタミンCやEは抗酸化作用があり、肌のダメージを軽減するのに役立ちます。
- 十分な睡眠: 睡眠中に肌のターンオーバーが促進されます。質の良い睡眠を7〜8時間確保するよう心がけましょう。
- ストレス管理: ストレスはホルモンバランスを乱し、肌トラブルの原因となることがあります。リラックスする時間を作り、ストレスを適切に管理しましょう。
- 室内の湿度管理: 特に乾燥する季節は、加湿器などを使って室内の湿度を50〜60%に保つよう努めましょう。
肌トラブルが改善しない場合はどうする?

セルフケアを続けても肌トラブルが改善しない場合や、症状が悪化する場合には、専門医への相談が重要です。自己判断で市販薬を使い続けると、症状を悪化させたり、適切な治療の機会を逃したりする可能性があります。当院では、「もっと早く受診すればよかった」とおっしゃる方が多いです。早めの受診で、症状の悪化を防ぎ、適切な治療を受けることができます。
皮膚科受診の目安
以下のような症状が見られる場合は、皮膚科医の診察を受けることを検討してください。
- かゆみが強い、または持続する: 夜間に眠れないほどのかゆみや、数日経っても改善しないかゆみは、皮膚疾患の可能性があります。
- 赤みや湿疹が広がる、または悪化する: 市販薬を使っても改善しない、あるいは範囲が拡大する場合は、適切な診断と治療が必要です。
- 肌がひどく乾燥し、ひび割れや出血がある: 重度の乾燥は、感染症のリスクを高める可能性があります。
- ニキビが炎症を起こしている、膿を持っている: 炎症性のニキビは、適切な治療を行わないと痕が残る可能性があります。
- 特定の季節に繰り返し症状が出る: 季節性のアレルギーや皮膚炎の可能性も考えられます。小児における季節性病原体とヘノッホ・シェーンライン紫斑病の関連性も報告されています[2]。
皮膚科での治療法
皮膚科では、症状の原因を特定し、患者さま一人ひとりの肌の状態に合わせた治療法を提案します。
外用薬による治療
- ステロイド外用薬: 炎症やかゆみを抑える効果があります。強さや使用期間は医師の指示に従うことが重要です。
- 非ステロイド性抗炎症薬: ステロイドに抵抗がある場合や、軽度の炎症に用いられることがあります。
- 保湿剤: 医療用の保湿剤は、市販品よりも高い保湿効果が期待でき、肌のバリア機能回復をサポートします。ヘパリン類似物質や尿素製剤などがあります。
- 抗菌薬・抗真菌薬: 細菌感染や真菌感染が原因の場合に処方されます。
内服薬による治療
- 抗ヒスタミン薬: かゆみを抑えるために処方されることがあります。
- 抗菌薬: 重度のニキビや細菌感染を伴う皮膚炎の場合に用いられます。
- ステロイド内服薬: 広範囲にわたる重度の炎症に対して、短期間処方されることがあります。
その他の治療
- 光線療法: 特定の波長の光を当てることで、アトピー性皮膚炎などの炎症を抑える治療法です。
- アレルギー検査: アレルゲンを特定することで、今後の対策に役立てます。
処方された薬は、医師の指示通りに正しく使用することが重要です。自己判断で中断したり、量を調整したりすると、症状が悪化したり、副作用のリスクが高まったりする可能性があります。
まとめ
季節の変わり目の肌トラブルは、気温や湿度の変化、紫外線、アレルゲンなどの外部環境要因によって肌のバリア機能が低下することで生じます。春は花粉症皮膚炎やニキビ、夏は汗疹や日焼け、秋は乾燥肌や敏感肌、冬は重度の乾燥やひび割れなど、季節ごとに異なる特徴があります。
これらのトラブルを予防・改善するためには、優しい洗顔と十分な保湿、年間を通じた紫外線対策、そしてバランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス管理といった生活習慣の見直しが不可欠です。セルフケアで改善が見られない場合や症状が悪化する場合には、早めに皮膚科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。専門医の指導のもと、肌の状態に合わせた外用薬や内服薬、その他の治療法を検討することで、肌トラブルの悪化を防ぎ、健やかな肌を保つことが期待できます。
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よくある質問(FAQ)
- Junmin Chen, Zixian Chen, Bo Xu et al.. Skin microbiome of Asian elephants with skin diseases during seasonal transitions.. Microbial pathogenesis. 2025. PMID: 40571107. DOI: 10.1016/j.micpath.2025.107832
- Arthur Felix, Zein Assad, Philippe Bidet et al.. Common Seasonal Pathogens and Epidemiology of Henoch-Schönlein Purpura Among Children.. JAMA network open. 2024. PMID: 38578638. DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2024.5362
- Allison Tsai. Winter Skin Guide.. Diabetes forecast. 2018. PMID: 29879322
- J T McCarthy. Summer woes.. Cutis. 1996. PMID: 8823543
- ヘパフィルド(ヘパリン)添付文書(JAPIC)